アディダスの「Galaxy 6（ギャラクシー6）」のスペックを見ると、多くの人が真っ先に気にするのがその重量です。
片足約315g（27cm）。近年のランニングシューズが軽量化を競う中で、この数字は決して軽いとは言えません。
しかし、もしあなたがランニング初心者や、ダイエット目的で運動を始める方、あるいは体重が少し気になる方であるなら、「軽さ」よりもこの「重さ」こそが最大の味方になります。
なぜ
シューズが、怪我のリスクを下げ、トレーニング効果を高めるのか。そのメカニズムを専門的な視点で解説します。
まず、ギャラクシー6の基本的なサイズ感や一般ユーザーの口コミ評価を知りたい方は、以下の完全ガイドをご覧ください。
「軽いシューズ＝良いシューズ」という誤解
ランニングシューズ選びで最も陥りやすい罠、それは「上級者向けの軽量シューズを初心者が選んでしまうこと」です。
トップランナーが履くシューズは100g台のものもありますが、あれは「着地衝撃を自らの筋力で支えられるアスリート」が、1秒でも速く走るために極限まで保護機能を削ぎ落とした結果の軽さです。
一方、これから体を作っていく段階の人がそのようなシューズを履くとどうなるでしょうか？着地の衝撃がダイレクトに膝や腰に伝わり、シンスプリントや膝痛などの怪我に直結します。
ギャラクシー6の315gという重量は、単なる「重り」ではありません。それは、あなたの体を守るための「プロテクターの重さ」なのです。
315gの重量がもたらす物理的な「振り子安定効果」
物理学の観点から見ると、質量がある物体は**「慣性（イナーシャ）」**が大きく働きます。これは、一度動き出したらその軌道を維持しようとする力です。
着地時のブレを抑制する
軽量すぎるシューズは足さばきが良い反面、着地した瞬間に足首がグラつきやすくなります。初心者は足首周りのインナーマッスルが未発達なため、このグラつき（プロネーションの乱れ）が膝へのねじれ負荷となります。
対して、ある程度の重量があるギャラクシー6は、その重さ自体がアンカー（錨）の役割を果たし、着地時の微細なブレを物理的に抑制します。結果として、足首が安定し、膝が真っ直ぐ入る正しいフォームへの矯正効果が期待できるのです。
遠心力を使った省エネ走行
重さは「振り子」のエネルギーを生み出します。ある程度の重さがあるシューズは、一度足を前に振り出すと、その重さが遠心力となり、自然と足を前へと運んでくれます。
筋力だけで足を運ぶのではなく、シューズの重さを利用して振り子のように走る感覚を掴むことは、長時間のLSD（長くゆっくり走るトレーニング）において非常に有効です。
「ミッドソールの厚み」はサスペンションの性能差
ギャラクシー6が重くなっている最大の要因は、アディダス独自のテクノロジー「Cloudfoam（クラウドフォーム）」を惜しみなく分厚く使用している点にあります。
体重がある人ほど恩恵を受ける衝撃吸収性
ランニングの着地時には、体重の約3倍の衝撃がかかると言われています。体重70kgの人であれば、一歩ごとに210kgの負荷が片足にかかります。
薄いソールではこの衝撃を吸収しきれませんが、ギャラクシー6の厚みのあるミッドソールは、車で言えば「大型SUVのサスペンション」のようなものです。
この厚みが重量増の原因であっても、膝や腰へのダメージを物理的に遮断する壁として機能します。特にダイエット目的で体重がある状態で走り始める場合、この厚さは必須条件と言えます。
「つま先の硬さ」が足底筋膜炎を防ぐ
親記事でも触れられている「つま先（フレックスグルーヴ）の硬さ」についても、ポジティブな側面があります。
人間の足は、疲労してくると土踏まずが落ち込み（アーチの低下）、足裏の筋膜が過剰に引き伸ばされます。これがランナーの天敵「足底筋膜炎」の原因です。
柔らかすぎるシューズは足の動きに追従しすぎ、疲労した足の変形を許してしまいます。しかし、ギャラクシー6のように屈曲性が「あえて硬め」に設定されているシューズは、足裏のギプスのような役割を果たします。
過度な曲がりを防ぎ、足裏のアーチをサポートし続けることで、長時間の歩行やランニングでも足裏への負担を最小限に抑えてくれるのです。
結論：ギャラクシー6は「走る戦車」である
アディダス・ギャラクシー6を車のタイプに例えるなら、F1マシンのようなスピード重視の車ではありません。悪路でもドライバーを安全に運び、決して壊れない「堅牢なSUV」や「戦車」です。
315gという重量、厚いソール、硬いつま先。
これら一見デメリットに見える要素は、実は全て「耐久性（タフネス）」と「安定性（スタビリティ）」というメリットに変換されます。
これから運動習慣を身につけたい、怪我なく長く走り続けたいと考えている方にとって、この「頼もしい重さ」は、4000円台で手に入る最高の保険となるはずです。
サイズ選びに失敗しないためにも、購入前には必ず親記事のサイズ感レビューをチェックして、最適な一足を選んでください。
